





昭和50年(1975)に、学芸書林から出版された栗原隆一著・井出孫六監修の『斬奸状』(初版・定価2800円)である。 個の生々しい記録の積み重ねの中に、幕末・維新の実態を鋭くえぐった一級史料といえよう! 20年以上前、神田古書会館で行われたコレクター向けの古書展示即売会(城北展)で購入したものなので、古書としても「上」レベル以上の逸品である。
著者の栗原 隆一は、幕末維新史に関しては、定評のある歴史家である。 福岡県生まれ。 明治大(政経)卒業後に産経新聞社へ入社。 記者を経て文筆家となる。 3つ上の先輩記者に司馬遼太郎がいた。 著書には、『幕末海戦物語』『戊辰戦争物語』『幕末諸隊始末』『幕末日本の軍制』『西郷隆盛順逆の軌跡』『松陰 その叛逆の系譜』『幕末諸隊100選』『御用盗始末記』『四七都道府県の明治維新』『西郷と大久保の生涯』など多数ある。 栗原氏の本は長年愛読しているがハズレがあい!
監修をした井出孫六は、『アトラス伝説』で直木賞を受賞。 秩父困民党をはじめ、西南戦争の西郷薩摩軍など、反乱の民衆史に詳しい。 小生も若い頃、教えを受けた尊敬すべき作家先生である。
ペリーの浦賀来航以後、風雲急を告げ国論は開国か攘夷で二分した。 大老・井伊直弼が水戸烈公らを押さえて、開国に踏み切り和親条約・通商友好条約を批准した。 さらに、安政の大獄を断行し、吉田松陰をはじめ、橋本佐内、頼三樹三郎らを処刑した。 その後の桜田門外の変、坂下門外の変は御存知のとおりだ。
『斬奸状』とは、相手をなぜ殺したかを記した書状である。 「奸」は外的には悪者の意で、おもに幕末維新のテロリストの犯行声明といえよう。 内的には、暗殺以上におのが信念を生死を賭して、天下に訴えた男たちの雄叫びを感じる。 ただし、殺す側にも殺される側にも正義はあり、いちがいにどちらが正しいと論ずることはできない。 憤怒の情を、あえて暗殺という狂気に発した生き方は問われるところも内包している。
本書には、斬奸状を軸に思想信条を綴った各種文書や檄文、血盟書、罪状書、予告文、梟首、糺弾の張札、嘆願書、諫言書、申渡状など200種以上が所収されている。 そのすべては記せないが、本書の価値を判断するには、必要なデータなので長時間の手間をかけて、気になる項目だけでも下記に列記させて頂いた。
【序論】
●「天誅者の分析」
●「ローニンと異人斬り」
●「清水清次と間宮一」
●「貿易商人への挑戦」
●「天誅禁止令」他。
【本論慶長・元禄・文政・天保・安政年間】
●「直江兼続の戦書」(慶長五年四月十四日)
●「浅野内匠頭家来口上書」(元禄十五年十二月)
●「異国船打払令」(文政八年二月)
●「大塩平八郎討奸檄」(天保八年二月十九日)
●「薩摩藩精忠組に対する藩主告論」(安政六年十一月五日)
【本論文久年間】(1861~64)
※以下の元号年月日記載は省略させて頂きます。
●「水戸浪士有賀重信の存意書」
●「土佐勤皇党血盟書」
●「安藤信正斬奸状」
●「吉田東洋暗殺」
●「島田左近斬奸状」
●「長野主膳断罪文」
●「本間精一郎斬奸状」
●「目明し文吉斬奸状」
●「長州藩御楯組血盟書」
●「池内大学斬奸状」
●「賀川肇の首に添えた脅迫状」
●「山内容堂宿舎への投文」
●「足利三代の木像梟首」
●「偽浪士巨魁の罪状書」
●「老中井上河内守門外へ張紙」
●「姉小路家より遭難の届書」
●「松平春嶽に対する天誅予告文」
●「大阪難波橋南詰の天誅予告文」
●「京都三条大橋に斬奸状」
●「七卿西下時の檄文」
●「瑞泉寺など洛中に会津糺弾の張札」
●「貿易商人に対する天誅予告」
●「天誅組の触書」
●「箱屋惣兵衛斬奸状」
●「天誅組戦死者にたいする科書」
●「生野挙兵の決起文」
●「天誅組決起文」他。
【本論元治年間】(1864~65)
※以下の元号年月日記載は省略させて頂きます。
●「江戸市中に貼られた檄文」
●「江戸城和田倉門閣老糺弾の張紙」
●「大阪道頓堀大和橋に斬奸状」
●「大阪御堂前に薩摩藩士大谷仲之進梟首」
●「天狗党決起文」
●「冷泉為恭斬奸状」
●「佐久間象山暗殺」
●「長州藩率兵上京組の嘆願書」
●「小金原で諸生党の佐藤久太郎梟首」
●「長州追討令」
●「大坂大川町金相場会所に天誅予告文」
●「防長四境の制札」
●「守護職会津容保への諫書」
●「清水清次ら異人斬り浪士に申渡」他。
【本論慶応年間】(1865~68)
※以下の元号年月日記載は省略させて頂きます。
●「馬関に討奸檄」
●「越前敦賀において斬罪申渡し」
●「水戸における武田伊賀罪状書」
●「長州再征の廻状」
●「長州国境への制札」
●「武市瑞山に対する罪状申渡」
●「岡田以蔵斬罪宣告書」
●「将軍家茂に下された詔勅」
●「水戸藩庁に提出の諸生党誓約書」
●「出合河原で赤根武人斬罪梟首」
●「小瀬川に第二奇兵隊脱走者の立札」
●「松平春嶽、一橋慶喜に諫書を進呈」
●「原市之進斬奸趣意書」
●「赤松小三郎斬奸状」
●「江戸市中攪乱予告」他。
【本論明治年間】(1968~)
※以下の元号年月日記載は省略させて頂きます。
●「朝敵徳川慶喜追討の高札」
●「天誅禁止の布令」
●「一橋旧臣間に廻された檄文」
●「大総督府軍門へ捧げる海舟嘆願書」
●「徳川慶喜に対する御沙汰書」
●「上野彰義隊討伐の布告」
●「米沢藩士雲井龍雄の討薩檄」
●「河合継之助口上書」
●「幕府海軍品海脱出時の檄文」
●「徳川脱艦の布告書」
●「榎本武揚嘆願書」
●「横井小楠斬奸状」
●「大村益次郎暗殺下手人斬罪申渡状」
●「佐賀征韓党決起文」
●「江藤新平斬罪梟首」
●「岩倉具視襲撃犯人に対する斬罪申渡状」
●「西郷隆盛・政府問罪の届書」
●「大久保利道斬奸状」他。
【解説】
本の状態は、かつて神田古書会館で行われたコレクター向けの古書展で購入したものなので、古書としても「上」の部類である。 値段は安いが場末の古本屋のボロ本とはちがう! 帯も完全ではないが切れ端は残っている。 発送はゆうメール1キロ以下340円(旧料金)が一番お安いです。 昨年の消費増税分は頂戴いたしません。
(2015年 6月 21日 11時 34分 追加)長らく出品をしていた主人が、4月中旬から大病で複数の手術と治療により、入退院を繰り返してます。 おそらく、9月末までは復帰はできません。 常連さんから要望で、ウォッチの多い商品を、多少の値下げをして短気の再出品をいたします。 商品内容に関する質問には、主人が闘病のために答えられい点はお許し下さい。 取引銀行は、ゆうちょう銀行とJNB、都市銀行がございます。 出品者の妻より。
一級史料 幕末・維新の政治声明 『斬奸状』 栗原隆一著 1975年